カツオドリの亜種、アオアシカツオドリは独特な求愛行動がテレビで取り上げられたこともあり、動物好きな人達の間ではファンが多い有名な野鳥です。
そのしぐさやキュートな外見も手伝って彼らはとても楽しそうに生きているように見えますが、実は彼らの生涯はそのお気楽な見た目とは違い過酷で悲しいことの連続なのです。
その楽しそうな姿の裏に隠れた彼らの悲哀…今回はそんなカツオドリの魅力と生涯について見ていきたいと思います。
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目次
カツオドリの生態・特徴
カツオドリはペリカン目カツオドリ科カツオドリ属に分類され、日本では亜種:カツオドリが生息しています。
英名の「ガネット」で呼ばれることもあります。
体長は64~74cm、翼開長130~150cm、体重は約1kgで、よく海で見かけるウミネコよりもずっと大きい鳥です。
全身は黒褐色で、腹部から翼、尾羽の基部にかけての下面は白く、コントラストがはっきりしていています。
その外見的な特徴から、種小名の「leucogaster」は「白い腹」を意味しています。
クチバシや足は淡い黄色で、オスは目の周囲にある露出した皮膚が黄緑色、メスは黄色、幼鳥や若鳥は腹部や尾羽の下側基部に黒褐色の斑紋が入る特徴があります。
繁殖は、集団繁殖地(コロニー)を形成して、コロニー内では首を左右に振って縄張りを主張します。
海岸の断崖に枯れ草や枯れ枝を集めた巣をつくり、通常1~2個の卵を産みます。
抱卵はオスメス交代で行い、抱卵期間は約45日です。
卵を2個産むのは1個目の卵が捕食・破損した時の保険のためで、先に孵った雛は後に孵った雛を殺してしまうため、親鳥は1羽だけ育てることになります。
なお、雛は85~105日で巣立ちます。
カツオドリの寿命は野生下では約20~30年といわれています。
昔は食用のために捕獲されていたこともありますが、現在は禁止されています。
カツオドリの分布
日本では亜種カツオドリが仲御神島、伊豆諸島、硫黄列島、小笠原諸島、草垣群島、尖閣諸島で繁殖し、その周辺の海上で見られます。
上記の島をはじめ、多くのエリアでは夏鳥に分類されていますが、沖縄島、石垣島等では冬鳥として寒い冬の海に姿を見せることもあります。
また、鹿児島湾での観察記録や兵庫県の瀬戸内海でも観察されたことがあり、撮影もされています。
他亜種はインド洋、南太平洋、太平洋西部から中東部、カリブ海など亜熱帯から熱帯気候の海域に広く分布しています。
また、カツオドリの繁殖期は、熱帯地方では1年中といわれますが、日本国内では3~8月とされています。
名前の由来
カツオドリの名前の由来は、この鳥がカツオなどの大型の魚に追われて水面付近に出てきた小魚などを狙って集まることから、カツオの群れの居場所を知らせる鳥として漁師からカツオドリと呼ばれるようになりました。
それがそのまま和名になったとされています。
カツオドリの種類
カツオドリと呼ばれることも多いですが、実はいくつもの種類に分類されています。
アオアシカツオドリ
ガラパゴス諸島を中心に生息し、青い足を交互にゆっくりと上げ下げするという独特な求愛行動が日本国内のテレビで紹介され、有名になりました。
足の青色は餌に含まれるカロテノイド色素が蓄積されたもので、この青色が綺麗な個体ほど求愛行動の成功率が高いと言われています。
近年は餌になるイワシの減少で絶滅の危機に瀕しており、環境保護当局が保護対策に当たっています。
アカアシカツオドリ
インド洋、大西洋、太平洋の熱帯、亜熱帯地方の海域に生息し、日本にも少数が南西諸島、硫黄列島、小笠原諸島に飛来します。
外見は、全体的に白く、初列・次列風切(羽の外側の部分)が黒、顔の皮膚が露出した部分が赤色で嘴と目の周囲が青味がかった灰色で、足が赤いのが特徴です。
日本では絶滅危惧IB類に指定されています。
アオツラカツオドリ
インド洋、大西洋、太平洋の熱帯、亜熱帯の海域に分布、日本では尖閣諸島、西之島で繁殖します。
外見は全体的に白色で、初列・次列風切と尾羽が黒、目の周囲には毛が無く暗青色で嘴が黄色、足は青味がかった灰色です。
日本では絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
ナスカカツオドリ
メキシコ、エルサルバドル、コロンビア、エクアドル、ペルーなどの東太平洋のバハ・カリフォルニア沖からガラパゴス諸島に分布します。
外見は白色で、初列・次列風切と尾羽が黒、顔面の皮膚は暗褐色で、虹彩が黄色、嘴は黄色、足が灰色で同属の中では比較的地味なのが特徴です。
何を食べる?
食性は動物食で魚類や軟体動物(イカなど)を主食にしています。
餌の取り方は、空中から水中の魚などを探し、小魚の群れなどを見つけると一旦滞空したあと急降下して潜水し、泳いで小魚を捕えます。
足の指の間には泳ぐのに適した水かきがついています。
大型の魚類が捕食のために追いたてた小魚の群れを襲うことが多く、大型の魚類から餌を掠め取っていくことが多いです。
また、飛翔能力にも長けているため、水中に潜らずにトビウオを空中で捕えることもあります。
死因の多くは失明によるもの
カツオドリは20~30年という長生きする鳥ではありますが、その死因の多くが失明によるものです。
広い海を自由に飛びまわって生きているカツオドリが失明によって死ぬ、ピンとこない方もいらっしゃると思いますが、カツオドリにとって失明は避けて通ることのできない運命なのです。
失明の原因はカツオドリの採餌方法そのものにあります。
上空から小魚の群れめがけて一直線に海にダイブするカツオドリたち。
テレビの映像で見ると凄い速さです。
当然、あれだけの速さで水に突っ込んでいけば体、特に頭への衝撃は相当なもの。
この激しいダイブを繰り返すことによって頭や目に徐々にダメージが蓄積し、その結果、失明に至るというわけです。
まとめ
独特な求愛行動がテレビでも紹介され、そのユニークな姿や仕草で有名になったカツオドリですが、かわいらしい姿の裏には哀しい生涯が隠れていました。
生まれた時から生存競争が始まり、生きるための海へのダイブが徐々に自分の体を蝕んでいき、やがてはそれが原因で失明する。
20年、30年と長い寿命を持ちながら、他の生き方を選ばず、自分の命を削りながら生き続ける姿は不器用ながらも激しく感動を覚えます。